武道

空手の型はなぜナイハンチからはじめるのか?

空手の型 ナイハンチ
 

 

空手の稽古は、古来、型を中心として行われ、ナイファンチ(ナイハンチ)の型は首里・泊手では最初に教えられる基本の型です。

 

空手の型は昔の達人たちが、長い間の修練と貴重な体験によって編み出した、受け、突き、打ち、蹴りの基本技を合理的に構成して、四方八方に敵を想定して、定められた演武線を前進後退、転身して演舞するものに完成させたのです。

空手の型はなぜナイファンチ(ナイハンチ)からはじめるのか?

 

ナイファンチ(ナイハンチ)の型は基本の立ち方であるナイハンチ立で、その姿勢をくずさず、横一直線上の演武線を移動して、左右同様の攻防の技法を展開するシンプルな型です。

 

そのシンプルな型は、まずその足構えを基礎としての優れた身体の運用技術が、とても及びもつかない術の世界へ到達させてくれるのです。

 

人の身体は自分の思い通りにはとても働いてくれぬものであることはご承知のことと思います。

 

それをただ動くのではなく、精妙な“術”と呼べるほどのものとして動けるようにしてくれるものが、その足構えを基礎とした術理術法に則った型なのです。

 

その結果、空手の呼吸法、手、足、腰の空手技法の基本的な土台と、空手をやるうえの空手力がつくられていき、武道精神、丹力が養成されていくのです。

 

 

強大な打撃力を発揮するためのナイファンチ(ナイハンチ)の立ち方

 

和道流の大塚博紀師はナイファンチ(ナイハンチ)の立ち方について次のような言葉を残しています。

「足で立つのでなく体で立つ気持ちでなければならない。

例えば腰を掛けている椅子が楽に引き抜けるように又抜かれてもそのままの状態に体が

残っているように腰で体を椅子に支えるのでもなければ足で体を支えているのでもない。

体で体を支えている気持である。この気持は練磨を積んで味得する外はない。」

 

武道で技を伝えようとした場合、言葉や文字より何よりも“動き”が大事なことは言うまでもありません。

しかも、その動き方は日常動作するものとは全く異質のもの“武”であり“術”なのです。

しかし“異質”とはいえ外見的な身体の動作に変わりはないのです。

 

そこで、「体で体を支えている気持」とは精神的観念論ではなく、型に付随した技術論であり、練磨を積んで味得することによって強大な一撃必倒の打撃力を発揮できることを可能にするのです。

 

型においては運動能力や体力、年齢、性差に関係のない術技的身体能力―つまり、いわゆる極意といわれる自然本来の身体の所作が可能となるのです。

 

破壊力をつけ、技を極めるには、「入り身」、「浮き身」、「無足の法」は欠かせない術技で、天性の運動神経に任せた力技ではとても到達ができません。

 

大塚博紀師の「体で体を支える」とはこの「入り身」「浮き身」「無足の法」を身に付け武術的身体へと変化をすることなのです。

 

ナイファンチ(ナイハンチ)の型は基本にして極意

 

ナイファンチ(ナイハンチ)の型は攻撃相手に対し外見上からは90度の真半身になることを特徴とし、すでにその時点で二の手を封じる構えとなっています。

 

二の手を封じる構えとは、相手の攻撃を受けると同時に相手が次の攻撃ができない状態、つまり「無力化」してしまうことです。

 

正中線を崩さずに、相手に気配を感じさせないように筋力を使わずに入り身から浮き身そして無足の法で入ると、これが「攻守一如」の技として、攻撃を仕掛けた相手は、身体が止まり攻撃技は中心から外れてしまいます。

 

正中線と丹田を身体感覚で捉えられるようになると、「自然体」ができあがってきます。

 

そして「観の目」を働かせて、相手の攻撃の手足が動く直前の瞬間の気配を捉えることを心掛けるなかで技・術を身につけていくことが大事です。

 

「観の目」とは

 

宮本武蔵が残した言葉の中に「観の目つよく、見の目よわく、遠きところを近く見、近きところを遠く見ること、それが兵法の要である」というのがあります。

 

「観の目」とは、通常の視覚で捉える見の目でなく、相手の攻撃の動きの直前の段階で、相手の攻撃の意図を捉えてしまう「目」というか直観に近いものです。

 

こうした「観の目」があれば相手の攻撃の直前を捉えることができるので、正中線に入り込むことによって「無力化」ができるのです。

 

目は最も敏感な感覚器官です。

それだけに目を自在に使いこなせれば精神が安定して自分の精神をコントロールできるようになります。

 

ナイファンチ(ナイハンチ)の型を行う時は常に「観の目」を心掛けることです。

 

私は意識を後頭部の斜め上に持っていき、そこから自分の身体を通して観るような感覚で行っています。

 

型イコール技

ナイハンチの型の各動作は一見非常に単純ではありますが、本来の意味を内面的なものを含めて体感できた時に、その型自体が「生きた型」すなわち武技そのものとして実戦に使える術として体得できてくるのです。
 
その結果、この型の各動作の隠されているものを理解して、体得すれば、武道の技が術として動きとして会得できナイハンチの型をやればやるほど、心身が変化をして自信と勇気に繋がっていきます。

 

どこからはじめたらいいの?

まずは、これから空手を始めてみようと思っている人も、すでに空手を経験しているが伸び悩んでいる人、型と組手は別物と思っている人も、ナイハンチの型を覚えましょう。
 

そして「このシンプルな型のどこに実戦に通じるものが隠されているのか」を考えてみてください。

 

 

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