空手の組手だけでなく武道に関して『間合い』は勝つ方法においては必要欠くべからざるものなのです。
単なる空間であり距離に過ぎない『間合い』というもののその中には説明のしようがない「気力」が渦巻いています。
自分自身の『間合い』を会得した者は勝者になって、相手の『間合い』に取り込まれた者は敗者に転じてしまいます。
まさに勝敗の鍵を握る『間合い』というものをここでは考察してみることにしました。
空手の組手で勝つ方法は動じない心で間合いを制すること
空手で勝つ方法は相手の間合を潰し、自らの間合の中で常に有利に組手競技(試合)を制していくことによって勝利が垣間みえるのではないでしょうか。
このような勝負の局面から逃る者は、いつでも負け組となり、これに勝とうが負けようが、敢然と立ち向かう者のみに勝利の女神は微笑むのです。
当然のことですが、勝負には勝ちと負けがあり、負けるのではないかという不安が拭い去れないものです。
この不安要素は大別すると二種類あげられます。
一つは精神的な不安であり、もう一つは技術的に自信が持てないことによる不安があげられます。
この二つの不安材料を如何に取り除ぐかが勝利へのキーポイントとなります。
精神的な安定と技術的な自信に裏付けられて、ようやく負けない為には何をすべきなのかという事が見えて来ます。
これらの勝つための根拠をしっかり稽古の中で身に付け、やることは全てやり遂げた、後は勝負に臨むだけだと言う様な心境を手にして、初めて勝利は転がりこむ様に出来ているものなのです。
従って、勝利に少しでも近づこうと思ったら、先ず絶対に負けないと言う事を心に刻み込むことが必須になります。
あせりとあわて
実戦にも競技にも関係する心理に「あせり」と「あわて」があげられます。
「あせり」とは自分の思い通りにならない状態、自分の予想しなかった不利な状態のときに引き起こされれます。
真剣勝負は「あせり」が生じることはあまりなく、時間制限のある試合ではよく引き起こされます。
「あわて」は、試合だとしたら「早く決めちゃおう!」とか、ケンカなら「自分のほうからしかけなきゃ」とかというときに生じるものだと言えます。
どっちも精神面に余裕がない状態に陥っています。
ともかく一度冷静になることが大事です。
そうでないと、試合でも何でもかんでも、あせると攻撃の間合いがまだ適切でないところから攻めてしまう。
あわてないで、気持ちにゆとりを持って臨む以外はないのです。
間合を制するという事
さて、空手の試合における間合いについてもう一度考えて見ましょう。
相手の間合いに入って自分の間をつくりあげるとすると正中線をしっかり保持して相手が攻撃しにくい体勢を築きあげる事で相手の間を崩していかなければならないのです。
受けには大きくわけて二つあります。
「受動的な受け」と、攻撃の道筋を開くための「つぶしの受け」ということになります。
相手の中に入っていくにはこのアクティブな「つぶしの受け」ができなくてはいけないのです。
そのためには、常に自分から仕掛けて、前へ出れることが、相手に力を出させないことにつながります。
つまり、相手の未発の攻撃、すなわち潜在的な攻撃をつぶすのが「つぷしの受け」ということになります。
すなわち敵が攻撃してくれば、これを防御即攻撃し、来なければ相手の潜在的な攻撃をつぶして、即攻撃を仕掛けます。
こうした受けの潜在力を相手に感じさせつつ前進すれば、相手は容易に攻撃できません。
この状態で鍛えあげた体力や技を生かす自分の間合いを作るのです。
この様に、勝負の主体性を確立した空間が自分の間合いなのであります。
間合いの実践
「勝負の要は間なり」という様に、勝負は間によって変化します。
戦う者にとって、間合いというのは実践するものであり、間合いを効果的に実践するためには、「拍子」に習熟し、更に相手の「攻撃意識」を「読む」能力を持つことが必要であります。
「拍子」に習熟するということは、どんな拍子でも技の動作ができるということを意味します。
また、戦いにおいてはどんな動作も相手との相対関係の中でのみ意味を持つのだから、相手の意図を「読む」という知覚力が要求されるのです。
この「読み」の能力に支えられてこそ、距離感覚やリズム感覚というものが「間合い」の中に生きて来るのです。
しかも、間合いというのは、「変化する相互間の距離」ではなく攻撃意欲や恐怖感などの満ちた、謂わばエキサイトした空間であるから、この中に身を置くための意志力など一見しても見えないものが間合いを実践する鍵となるのです。
組手慣れこそが試合に「勝つ」空手への早道
組手に強くなるには、まず組手に慣れるのが何よりも不可欠です。
組手慣れするには、ひたすら組手の数をこなすのが、一番なのです。
軽い組手を数多くこなす。
そのなかで徐々に目がなれてくるのです。
相手は十人十色でひとりとしておなじ攻めは存在しません。
あるいは相手のタイプによって、こちらのスタミナの消耗度が違うということも体で把握できるようになります。
そうしてそのうちに第六感ができ上がってきます。
「肩が動いたら来るな」「ステップインしてきたら、チャンスだな」と、自然に自分の本能で把握できるようになってきます。
こうなればしめたもので組手が楽しくなります。
楽しくなれば、いちだんと組手が上達するというわけです。
組手慣れが勝利への最短コースとは、言ってみれば当たり前のことだと言えます。
しかし、その当たり前のことがなかなかできないということでもあります。
やはりそこには、いかに数多く楽しく組手を消化することができるか、という創意工夫がなくてはならないのです。
勝負には、勝ち方と負げ方がありで勝つ時は誰でも意気軒昂にしているはずです。
しかし勝利につなげる為には、勝っておごらずの気持ちが大事になります。
ごれとは逆に負けた時は、人は意気消沈しがちです。
負けた時こそ、勝ったような顔をし、堂々と物事に対応する事が大事になります。
負けても勝者の心を持てるように癖づけるのです。
勝負を何度も行い、勝ったり、負けたりしながら、負けないこと、勝つことを覚えるのです。
勝負ですから勝ちにこだわる事は大事なのですが、それよりも今までやってきた事に自信を持ち、「人事を尽くして天命を待つ」の心境で力をだしきれば結果は後からついてくると信じて戦う事の方が勝ちは向こうから転がりこんでくる様な気がします。