
今回解説する動作は、実際に修練を重ねていくと、「組手は型の技と違っても構わない」というような安直な解釈ではなく、やはり型を深く学ぶことによって型の動作の意味することが分かると、型の重要性も違ったものとなってきます。
空手の型 ナイハンチは実戦の組手の達人として昭和期を代表する空手家の一人である本部朝基師が最も得意とし、この型だけに特化していたといわれています。
武道の練磨のはてに、心技体が極限の域に到達すると、術技は一見したところ単純なものに凝集されてしまうものです。
型の解説に使っている写真は、本部朝基師と大塚博紀師のものです。
空手の型 解説!ナイファンチ(ナイハンチ)第3挙動
ナイファンチ(ナイハンチ)第3挙動は閉足立ちから左足を右足前から一歩踏み出して交叉立ち、そこから右足を右に踏み出して真半身を崩さずにナイハンチ立ちになり、右手を手刀で右方向へ伸ばして正中線を維持すること。
本部朝基師の解説
右側面を見ると同時に、左足は軽く右足を越して、図の如く交叉する。これは右側よりの攻撃を、一歩踏み込んで受けると同時に、戦闘開始の準備である。
二の呼吸で、右手を右へ伸ばすと同時に、右足を右へ踏み出し、左手は握りながら脇腹に取り、充分後ろに引く。上体の姿勢はくずさず、腰に力を入れ、足は乗馬するが如く、両足の外側から中のほうに力を絞り込むような気持ちで踏ん張る。足の間隔は約45cmで八文字型にし、目は敵を正視する。
この時、打ち伸ばした右手は、敵の攻撃を受けると同時に突き込み、敵の手を握る意味を含むため、手首より先は裏返すような動作をする。足を踏み出すは、敵を蹴上げる意味である。
と解説をしています。
大塚博紀師は、「手足ではなく体の中心を意識して足で体を運ばず体で進むようにし両足で立ち方の姿勢をとらず腰と両脚で無意識のうちに極まるように修練を積むこと」としている。
真半身の入り身と浮き
では、ここで型からは見て取れない、隠された体捌きの基本とはどのようなものなのかを説明します。
まず、入り身の構えの基本は、図の如く半身に構えたとき、肩と膝と拇指が垂直に一直線になるように体を前傾させた姿勢のことです。
例えば、左半身で間合いを詰めるのに入り身の構えから、左の肩先を前方に引かれるように重心移動を行うと、正中線がぶれずに、気配をさとられずに、後の右足が筋力を使わずに、浮いた状態で前に移動できるのです。これが無足の法というものです。
入り身からの運足を練習方法
その方法は、図のように左半身となるようにして肩、膝、栂趾(天地人)が一直線上に重なるように入り身の構えから始めます。
この構えは腰が後に残った引け腰となり易いので特に注意が必要です。
この体構えから腰を崩さずに肩先を引かれるようにして前方に体を倒していくと、右足で地を蹴らずに第一歩を進めることができます。
この原理で次々と歩を進めて行くのですが足の筋力を使って床や地を蹴ることによって歩を進めるのではなく、倒れる力を利用した歩き方であり足捌きです。
この方法は足裏、趾を鋭敏にし、地を蹴り出して体を進めているという感覚が消えるまでの修錬が必要となります。
そして、体が前へ前へと倒れる力を利用するのであるから、ある程度の速度で行うとやり易いと思います。
第一歩の右足を出す時は体が前へ倒れるに従って左膝を折り、右足を浮かせ前へ踏み出す時は右足のふくらはぎが左膝に軽く触れるようにします。
特にこの時、左足の指の踏ん張りには気をつけてください。
さらに注意を要することは腰の上下動をしないようにすることです。
以上の修練を充分に行ってからナイファンチ(ナイハンチ)の型にそった動作で出来るようにしてください。
第3挙動の留意点
右側面を見るのに、横眼にならないように、しっかりと顔を右側面の右肩の上にあごが乗っているところまで向けて、その上に足の中心から頭頂までを真直ぐにして、正中線をしっかりと保ち、身体に捻じれが起こらないように注意しましょう。
そして、右側面の仮想の相手の正中線との間に正中面を創り、その正中面にそって右肩から真半身の入り身を形づくり、体が真横へと倒れる力を利用して、左足を地を蹴らずに浮かせて右足の前を交叉させて右側に踏み出すとともに、両手も肘から下が浮き上がって地面と水平になる様にします。
そのままさらに、入り身の体勢をくずさずに、左足を一歩進めてナイファンチ(ナイハンチ)立ちになると同時に、右手を正中面にそって、真直ぐ伸ばすのです。
その時、丹田が右腰の方に入り込んで、伸ばした右手に、すべての力が集約される感じで、身体全身に意識を集中させるようにします。
今回の入り身と浮きの術技は瞬間的に重さがなくなる無重力状態とも云えます。
この状態をあなた自身が自覚できる感性が出来てくると、心技体が今までとは違う次元に入り、威力が絶大なものとなるコツ(極意)を手に入れることができるでしょう。
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