一般的には、日本人の呼吸数は1分間に14~15回と言われています。
1分間に15回の呼吸とすると、1時間で900回、24時間では、21,600回の呼吸をしていることになります。
しかも呼吸のパターンは決まりきったものではなく、行動に応じて時々刻々変化しています。
ところが、地球に引力が作用していることが原因となって人間の身体に生理学上の習慣のようなものが引き起こされ、成長するにつれて横隔膜呼吸が下手になり、高校生ぐらいになると、正しい横隔膜呼吸法をしている生徒がほとんどいないというのが現状です。
信じられないかもしれませんが、ある医学的な調査では、病院へ診察を受けにくる人の病気の約75パーセントが、正しくない呼吸が関係しているという結果も出ています。
しかし、この問題は1日2万回以上の呼吸を味方につける心と身体のバランスを整える正しい横隔膜呼吸法によって解決できます。
これから紹介する横隔膜呼吸法の簡単な3つの方法で正しく横隔膜を使うことで心身が活性化されてくるのが感じられるでしょう!
横隔膜はあなたの健康にとって重要な鍵です。
正しい横隔膜呼吸法が心と身体のバランスを整える最高のものであることをあなたもきっと実感されることでしょう。
もし横隔膜呼吸のやり方が正しくないと、機能異常によって次のような症状あらわれやすくなります。
そこで効果があると言われる横隔膜呼吸の正しいやり方を順序に従って解説します。
横隔膜呼吸法【その1】 身体の内側を身体意識で体感する
まず、横隔膜呼吸法について、下記の画像をみながら横隔膜の構造をはじめとする、あなたの身体の内側を体感するところから始めます。
このあなたの身体の内部の体感によって、あなたは浅い呼吸という癖を確実に直すことが可能となり実際の日常生活に大いに役立つようになります。
■解剖学的な横隔膜呼吸法の効果
呼吸の働きを、あなたの身体意識でもって、呼吸の生理学的なメカニズムを体感するのです。
この身体の内側をのぞく解剖学的な横隔膜呼吸法が、意外にもそれ自体ですばらしい治癒力があります。
呼吸本来の働きを知覚することによって、それから先のより正確な探求のふりだしとなる確実な基礎が形作られるのです。
それでは、体の両脇に手をごく自然に伸ばして横たわって、足は適度に開いて下さい。
1.最初は、手を鎖骨の所へ持っていつて、指先でそこを感じてみてください。
2.鎖骨が肩とぶつかる身体の外の方から、鎖骨が胸骨とぶつかる身体の内側に沿つて指先でなぞってみましよう。
3.次に鎖骨に意識を向けて、肩から胸骨にかけて伸びている鎖骨を感じて下さい。
4.うまく感じることができなければ、指先でもう一度鎖骨をさわってみましょう。
5.そして、次に鎖骨の下にあって、指先ではっきりと感じることのできる肋骨が、じつは二番目の肋骨になります。
一番目の肋骨は鎖骨の内側にあるので、全体の形は感じとることが不可能です。
6.ですので、あなたの二番目の肋骨を指先でなぞって感じましよう。
7.肋骨がほとんど目立たない両肩のほうからスタートして、肋骨がはっきりと胸骨にぶつかるところまで指先でなぞってください。
8.二番目の肋骨が胸骨と交わる部分に指を置いたまま大きく呼吸をして、肋骨が動くのを感ましよう。
9.次に、指先でゆっくりと胸骨を下になぞっていって、ひとつひとつの肋骨が胸骨とぶつかる部分を感じてください。
10.一番下まで胸骨をなぞったら、最後の肋骨の真下にあたる奥まった部分にある「剣状突起」とよばれる小さな骨を指で感じてみてください。
剣状突起は身体の中で最も敏感で重要な組織である横隔膜とつながっています。
11.引き続いて、指先で一番下の肋骨をなぞってみましよう。どこまでそれが伸びているか感じてみてください。
一番下の肋骨のなだらかな線がウエストのあたりまで降りていっているのがわかるはずです。
私たちの多くは肺が胸の高さにあると思い込んでいますが、実際には、先ほど指でなぞった肋骨の構造にそって位置しています。
肺の形は相対的にみると上部が小さく、下にいくほど広がっていますので、呼吸本来の機能を充分に働かせるためにも、深い腹式呼吸を習得することが何よりも大切なのです。
肺を循環する血液の大部分は、肺の下から三分の一くらいのところに集中してますので、胸の上のほうで息をしている浅い呼吸では、呼吸本来の役割が果たされないのです。
12.では、両手を身体の両脇において、今まで自分の手で行なったことを今度は意識だけで感じてみてください。
13.意識を集中させて、鎖骨が胸骨とぶつかるようすを感じてみましよう。
14.胸骨が下に伸びていき最下端で剣状突起とぶつかるのを感じてみてください。
15.それからいちばん下の肋骨が左右に大きく伸びて、ウエストのあたりまで降りていっているのを感じてみましょう。
16.何度か大きく呼吸をして、そのたびに肋骨がどんなふうに動くか感じてみてください。
次に、重要な横隔膜について、もっと詳しく探求してみましよう。
■呼吸による横隔膜の動き
あなたの横隔膜はドームのような形をしています。
息を吸うと、そのドームは平らになります。
息を吐くと横隔膜は再びもとのドーム型にもどります。
何度か呼吸をくり返しながら、手で横隔膜の動きをまねてみましよう。
1.まず、ゆっくりと深く息を吸って両手をまっすぐにしてください。
2.次に息を吐いて、親指と小指以外の指を上方にふくらませてドームの形をつくってください。
こうすると、横隔膜の動きがよくわかるはずです。
息を吸い込むと横隔膜は実際に収縮して下方へと動き、それから、息を吐くと横隔膜は弛緩してドーム型にもどります。
以上を理解したうえで、実際に行ってみましょう。
■横隔膜呼吸法の効果的なやり方
効果的な呼吸を行なうためには、横隔膜と腹部の筋肉がともに協力して動かなければなりません。
まず、両手を腹部におきましょう。一方の手はへその上に、別の手はへその下においてください。
息を吸うと横隔膜は平らになって下方へと動きます。
このとき、あなたのおなかは息を吸い込みながら膨脹します。
おなかが弛緩していて、息を吸ったときふくらむのが理想的です。
身体は本来そうなるようにつくられています。
息を吸うとおなかがふくらんで、腹部の大切な臓器へのマッサージ効果がもたらされるのです。
■呼吸のメカニズム
人間の身体は、息を吐くとき筋肉が固くなるようにつくられています。
単純でありながら非常に重要なことですが、息を吐くときのほうが吸い込むときよりも強い力が入ることは確かなのです。
つまり、つねに充分にリラックスした状態で息を吸い込まなければならないということです。
息を吐ききった最後の瞬間に腹筋を少し緊張させるのは自然なことですが、息を吸い込むときには腹筋を最後まで完全に弛緩させていなければならないのです。
それでは腹筋を感じるつもりで両手をおなかにおいてみましよう。
吐く息の最後に、息を全部絞りだすように腹筋を少しだけ固くしてください。
それから息を吸い込みながら、腹筋を完全にリラックスさせてください。これを何度かくり返してみましよう。
横隔膜呼吸法【その2】おなかの底まで呼吸を通す方法を体得する
正しい横隔膜呼吸は、赤ん坊の呼吸です。
しかし、その健全な横隔膜呼吸法というものが、子供が大きくなるにつれて減少して、小学校の高学年になると横隔膜呼吸ができる子供は皆無と言えるようになってしまうようです。
■横隔膜呼吸法の正しいやり方とは
そこで次は、横隔膜呼吸法で、おなかの底まで呼吸を通す正しいやり方をマスターしましょう。
あなたも含め多くの人が正しい横隔膜呼吸を行なう能力とテクニックを失ってしまった理由は、様々ですけれど、今はとにかく、健全な横隔膜呼吸を回復させることによって、あなたが呼吸するたびに健康と喜びに満たされる様になるでしょう。
■横隔膜呼吸法を体得する
健全な横隔膜呼吸は、横になった状態で行なうのが最も自然です。
そこで、最初に横たわった状態で横隔膜呼吸を磨き、次に椅子に座った状態で曰常生活にそれを活用する方法を身につけるのです。
それでは、両手を身体の両脇に伸ばして横になってくつろぎましよう。
足の裏を床につけたまま適度に離して、両ひざを上に曲げてください。
では、腰を中心とした背中の部分をゆっくりと数秒かけながらそらせて、そのあとで床にもどし数秒間じっと横たわってください。
ゆっくり穏やかな動作のくり返しの中で、腰から背中にかけての微妙な感覚を感じとってください。
続いて腰をそらせて、ゆっくりとおなかをふくらませながら息を吸つてみましよう。
それから腰を床にもどして、ゆっくりと深く息を吐きます。
この動きをくり返しながら、尾骨の動きを感じてみましよう。
腰をそらせて息をおなかいっぱい吸い込むとき、尾骨が順番に床を転がっていって最後に先端の尾てい骨に達するのを感じてください。
さらに息を吐きながら腰をまっすぐにすると、今度は尾骨が背中に向かってさっきとは反対方向に転がるのを感じてください。
この尾骨という忘れられがちな部分が、呼吸といかにパーフェクトに連動しているかをじっくりと感じてみましよう。
これをくり返しながら、ちょうど肋骨のいちばん下の骨がウエストとぶつかるあたりに両手をおいてください。
呼吸をくり返しながら、息を吸い込んだときにおなかが前方と左右両側にふくらむのを両手で感じてください。
息を吸うとドーム型の横隔膜が平らになって、おなかが前方や左右にだけでなく背中の後ろのほうにもふくらみます。
息を吸うたびにおなかがふくらんで、息を吐くたびにおなかがしぼむのを感じてください。
呼吸するたびに身体の内側で何が起こっているかを思い描いてみましよう。
腰をそらせて息を吸うと、横隔膜は平らになって腹部のくぼみ(腹腔)に向けてなだれこみます。
このとき腹筋が弛緩していれば、おなかがふくらんで内臓が活動するための充分なスペースが残されます。
息を吐くと横隔膜は胸のくぼみ(胸腔)に向かってドームのような形にふくらみます。
さらに呼吸とともに背骨はそり返ります。
これが背骨を伸ばし内臓をマッサージする効果をもった、本来の正しい呼吸です。
こうした呼吸によって、体内は新鮮な酸素を含んだ血液で満たされ、しなやかで柔軟な背骨がつくられるのです。
これが出来るようになったら、こんどは椅子に座わり、ゆったりと楽な姿勢で行ないます。
できれば、まっすぐな背もたれのついた椅子で、ゆっくりとした動作で、腰を中心とした背中の部分を弓なりにそらし、それから椅子の背にぴったりとつくようにもどしましよう。
これは先ほど床の上で行なったものと同じ動きですが、重力に対する身体の位置が違うために、ちょっと違つて感じられるかもしれません。
腰をそらせたり、まっすぐにしたりするとき、座骨の上で身体が前後に揺れるようすに注目してください。
この動作を最初はおおげさなくらいに大きく何度か行なってから、だんだんと小さく微妙な動きに変え、実際の動きは周囲の人の注意をまったく引かないくらいにそっと行ないましよう。
以上が確認できたら、この動きに呼吸を加えましよう。
腰をまっすぐにしながら、息を吐いておなかから空気を抜いてください。
さらに息を吸うと、おなかの力が抜けてとてもリラックスしてきます。
呼吸とともにおなかの筋肉が弛緩していくように、体内の体験に意識を集中させましよう。
次に、肋骨の下のところに両手をおきましょう。
息を吸うと、あなたの腹部が前方と左右にふくらみます。
それを手で感じてください。息を吐くと腹部はしぼみます。
おなかがふくらんだりしぼんだりするのを感じ取りながら、静かにゆっくりと深い呼吸を複数回くり返して息を吸い続けながら、あなたのふくらんだおなかの中心にまで充分に空気を送りこんでください。
息を吐く際には、完全にしぼり出すかのように身体からある限りの息を吐ききってみてください。
さらに数分間呼吸を続けてから、リラックスしてください。
呼吸を行なう前と比較して、身体にそれ相応の違いが感じ取れますか?
横隔膜呼吸法【その3】交互鼻孔式呼吸で自律神経を整え心と身体を統合する
横隔膜呼吸法の応用ということもできる「交互鼻孔式呼吸」は気軽に実行できて、それでいて自律神経を整え心とからだを一体化する実効性のある呼吸法です。
とにもかくにも、この呼吸法は、すぐさま効くので意識状態に変化が起きることが経験できます。
鼻の左側は右脳と関係し合っていて、右側は左脳と関わりあっているのです。
ひとつひとつの鼻孔を通じて代わる代わる呼吸をやると、脳の一方の半球から他方の半球ヘスイッチの切り替えがおこりますが、この交互鼻孔式呼吸は、そうした生理的な状態がもたらされることを意識していると言えます。
鼻からの呼吸を活用して右脳と左脳を代わる代わる刺激を与えることは、非常に効果的な動作だと私は実感しています。
ゆっくりと深呼吸をしながら、一方の脳から他方の脳へ何度もスイッチを切り換えることで、左脳と右脳の調和を獲得するかのように感じることができるからだといえます。
■交互鼻孔式呼吸法は自律神経のバランスを良くする
交互鼻孔式呼吸法は自律神経のバランスを良くするので神経を安定化させ、頭は冴えると共にリラックス状態になります。
この呼吸法くらい無気力になって散漫になった心の内を速やかに改善させてくれる方法はほかにないと言えます。
この呼吸法を行なうと、意識が冴えてゆったりした気分になり、集中力がわいてきます。
意識を集中させて手順に従ってきちんと正確にゆっくりと行なえば、事あるごとに素晴らしい成果が期待できるのです。
個人的な体験としては、ストレスのかかる大勢の人を前にしたスピーチや試合前や、仕事でくたくたになったときなどに行なうと、気分が高揚し、気力がよみがえり意識が冴えて、冷静さを取り戻すことが可能になります。
■交互鼻孔式呼吸法のやり方
この交互鼻孔式呼吸法は、片鼻づつ交互にすることで意識的に「呼吸を左右均等にする」ことで潜在意識にこのことが刷り込まれます。
すると普段の呼吸でも左右を均等にしようということが自然に作用するようになる。
このことが非常に重要なこととなります。
まず、あなたの利き手から始めて、あとから反対側の手に交換してください。
まず人差し指を眉間に当てて、親指で鼻の外側を押さえ鼻孔をふさぐ。
最初に鼻孔からゆっくりと息を吐き出す。
吐き終わったら、そのままでゆっくりと吸い込む。
吸い込み終わったら、中指で反対の鼻孔もふさいで、息を止め3~5秒くらいで親指を離して反対の鼻孔から息を吐く。
吐き終わったら、そのままゆっくりと吸い込む。
吸い込み終わったら、親指で反対の鼻孔もふさいで、息を止め3~5秒くらいで中指を離す
これを何度かくり返しましよう。
だんだん慣れてきたら、呼吸そのものが鼻孔から出ていって、またもどってくる感覚に意識を向けてください。
おなかの筋肉をゆったりと弛緩深い呼吸をおなか全体でゆっくりと行ないます。
あまり力みすぎないよう気をつけてください。
ごく自然に静かに呼吸を行なって、2~3分間ほどこれを続けて行ないましよう。
2~3分経過したら、もう一方の利き手でないほうの手に交替し2~3分続けて行ってください。
最後にもう一度利き手、さらに2~3分間呼吸を行なってください。
最初は、なるべくゆっくりとした呼吸を3分間で10回以内を目標にするのがいいでしょう。
呼吸を行ないながら、止める時間を段々と伸ばしていくようにして呼吸を長く引き延ばしていきます。
心身のリラックスのために意識的呼吸法を実践している人には、非常にゆっくりと呼吸を行なうのが合っています。
速い呼吸ではとてもリラックスなどできないからです。
身体の中に深いやすらぎを感じるためには、毎分6~10回程度の呼吸数に変えることが望ましいでしょう。
最終的には1分間に3~4回程度しか呼吸していないということを目標としていきます。