
人間の本来のあり方は、あなたが自然の一部であることを理解し、自然と調和した動き、自然と調和した「心」を身につけていくことです。
人は誰しも長い生活習慣によって積み重ねられた思考のクセがあり、自分自身にさまざまな制限を設けて生きています。
「ガンバル」は、「我を張る」に通じる言葉であって、あなたのエゴを強めることに繋がります。
ところが、あなたが「ガンバル」のではなく「心」の「とらわれ」を取り去り、自然の法則にあなたを委ねきると、限界をやすやすと超えて、本来あなたの奥深くに備わっていた力が発揮できるようになります。
自然体の意味は最強の心技体
人間は、自覚できる自分が自分のすべてではないように、自分の能力においても、自分の全能力の一部しか使えていないのが現状です。
自然体の本当の意味とは、身体に中心軸が通っていて、安定感があり、リラックスしながらも周りの状況に対して柔軟に「当意即妙」に対応できる最強の心技体のあり方をいいます。
その自然体は決して「自然に」できるものではなく、立つこと、座ること、歩くことは、人間にとって基本的な動作で誰もが教えられなくても当たり前のこととして捉えられていますが、そこに落とし穴があるのです。
その意味では、日常生活においてしばしば用いられる「自然体で臨む」という時の自然体、すなわち「ありのまま」とは全然違う、いわば修練による「技」なのです。
武道では、自然体が基本の構えとされていますが、こうした自然体の構えをつくること自体が、ありのままの自然体ではなく修練を要するものであり、決して「自然に」できるものではありません。
修練の結果として、下半身は充実して力強く、上半身、とくに肩の力は抜けていて、柔軟に対応できるような構えができるようになって、自分でも信じられないほどの力が出せるようになっていくのです。
自然体という技があなたの心身の最大機能を発揮したときに、あなたの人生は、あらゆる領域で質が上がり、想像以上の能力の伸張が生み出されていきます。
そして、身体能力だけでなく、精神や脳の機能までをも向上させることができるため、結果として「あなたのなかでもっともよい状態」を生み出し、「あなたらしさ」を開花させる最強の心技体となるのです。
自然体な人の特徴5選
そこで自然体な人の特徴の主なものを5つほど選んでみました。
- 1.中心感覚がある
- 2.安らぎや充実感に満たされている
- 3.相手や周りに配慮することができる
- 4.能力が明らかに高度化する
- 5.人間的な魅力がある
1.中心感覚がある
人間は大自然(宇宙)が進化、向上をしている何十億年という長い生命活動の流れ(進化)の中において、今ここにいるのです。
その人間は、二本足で立つようになって形体上の進化はほぼ終わりましたが、中身、つまり、その機能についての進化はこれからなのです。
つまり、身体上は人間でも機能面はいまだ人間として働いていないということです。
人間の形態に最も影響を与えている自然の法則とは何でしょうか。
それは「重力」です。
自然の法則に自分を委ね「心」の「とらわれ」を解き放ち、自然の法則に適応することを会得するためには「中心感覚」により重力に支配されるのではなく、重力を使いこなすことにより、重力を超えた能力を会得出来るのです。
そして、これこそが「道を極める」ということに繋がっていくのです。
2.安らぎや充実感に満たされている
あまりに当たり前のものは知覚できないという人間の知覚の特性から、ほとんどの人が「重力」という働きのもつ意味、重要性について気づいていないのが現状でしょう。
安定感は地球の中心に引かれる感覚、つまり、「重力」に適応している感覚と言っていいでしょう。
「重力」に適応している感覚とは、自分の身体に受けている「重さ」の感覚とも言えます。
心身ともに、どっしりとした安定感が得られると、当然の結果として、安らぎや充実感に満たされている状態が訪れてきます。
自然体な人はそのことを深く理解できているのです。
3.相手や周りに配慮することができる
自然体な人は安らぎや充実感に満たされているので余裕があり相手を立てることができます。
普段の生活で出会う人に対して自然体な人は自分に自信を持っているので、相手を「分析」しないで、ただ「感じる」ができるのでポジティブで開放的な人間関係が築けるのです。
4.能力が明らかに高度化する
身体をゆるませることで精神の許容力が増していくと、あなたが長い生活習慣によって積み重ねられた思考のクセによって勝手につくり上げた「制限」による限界をやすやすと超えて、本来のあなたの奥深くに備わっていた力を発揮するようになります。
それも無理やりに壁を突破するとか、血がにじむような努力をするなどというのではなく、ごく自然に、「気がついたらそうなっていた」といった、ゆるやかで、しかも劇的な変身を遂げるのです。
5.人間的な魅力がある
自然体な人は等身大の自分を認めることができているので、ビジネスや学習の場で能力が上がり、対人関係も改善し、さらには人間的な魅力までもが向上します。
日本古来の武道には、人として生きていくための知恵と奥義が隠されています。
武道のスポーツ化がはなはだしい昨今、武道やスポーツといえば「根性」「闘志」などが思い浮かびます。
しかし、日本古来の武道の本質は「自然体」の言葉からも推察できる高度で有益な人生に役立つ「心の技」が活用できる可能性を秘めています。
自然体のつくり方でおすすめの方法が空手の基本型「ナイハンチ」の修練
そこで、「道を極める」とは、自分の「心」の「とらわれ」を取り去り、自然の法則に自分を委ねきることです。
そのために、武道としての空手の基本の型「ナイハンチ」の修練が役立ちます。

「ナイハンチのシンプルさの中に秘されている奥義を理解し体得することが、あなたが空手を上達出来るか否かのカギを握っている」ということがお分かりになったでしょうか?
次は、「ナイファンチ(ナイハンチ)の型は基本にして極意」ということを学んでください。

「観の目つよく、見の目よわく、遠きところを近く見、近きところを遠く見ること、それが兵法の要である」という宮本武蔵の言葉を紹介してあります。
この「観の目」と「ナイハンチ立ち」をよく理解してくださいね。

強くなるための必要条件として「正中線」と「丹田」をあげています。
ごくひと握りの、天才や達人に近い人だけが体現できることと考えられてきた「能力の最大化」の秘密が理解できるようになります。
繰り返しになりますが、非常に大事なポイントとなるところなのでさらに詳しく解説してあります。

ここからがいよいよナイハンチの型の実技の解説になります。

ナイファンチ(ナイハンチ)の用意から第1~2挙動の解説ですが、外から見たら単純な動きにしか見えません。
この単純な動きの内側をしっかりと意識にとどめて理解して、あなたの体感として感じとる修練を実行して何回も繰り返し行なっていくうちに「コレだ!」というものが得られます。
「正中線」と「丹田」それに「観の目」を体得し、いよいよ戦闘開始です!

「入り身と浮きの術技」はあなたの身体の「重さ感覚」がポイントです。
身体バランスの善し悪しは「重力感覚」の善し悪しで決まります。
「重力に適応するとは、重力に支配されることではなく、重力を使いこなすということであり、それは、いずれ重力を超えた能力を会得していくことに繋がる」と言ったことをかみ締めてください。

立ち方を崩さずに下半身は真半身のままの体勢で行うことで正中線をしっかり確保した全身力が左肘に集められ筋力に頼らずに、身体全体が正中線上を入り身になり、重力が最短距離を最大限の力で武器化した「技」となるのです。
次の第5挙動は戦う前に勝ちを制する先の構えで相手が攻撃せざるをえない状況に追い込む術です。
そして、

戦う前に既に結果を想定した、攻防一如の武道の極意に通ずる術技で相手が攻撃を仕掛けてきてから反撃するという消極的なものではありません。

ここでの一連の連続技は正中線をしっかりと捉えて入り身や浮身を駆使して力技ではなく、力を抜いた柔の中の剛の瞬発力を創り上げていく重要な部分ですので注意深く入念に工夫して体感を通しての心身の鍛錬に心掛けましょう。

ここでは浮き身によって正中線を維持して片足を挙げる「波返し」とそれに続く攻防一如を可能とする術に繋がる両手を同時に使った受け技を左右とも行います。

ナイファンチ(ナイハンチ)の型は、このあとはこれまで解説した第4挙動から第17挙動の左右を逆にした動作を行ないます。
ナイファンチ(ナイハンチ)の型には真理の無限性がこめられています。
技から術へ、術から理へ、理から道へと己を高めていく空手の型ナイハンチは、やればやるほど一番やさしくて一番むずかしい何か奥義があるように思われます。
技と術と理は不即不離で、一致して働らくことによって絶妙の手となってきます。
型の鍛錬の過程で、必ず技と術において、ハッと気づかせられるところがあり、壁はやぶられて豁然と技と術がひらけてくるものです。
低いレベルにおいては、型にかくされている深遠高度な術と理か見えず、わかりません。
型の声なき声を聞き、型の形なき形をみるには、さらに心の世界、即ち道の世界にまでつき進まなければならないのです。
自然体の意味:まとめ
「自然体の意味は最強の心技体!」と題して解説をしてきましたがいかがだったでしょうか?
柳生新陰流の極意として伝わっている柳生宗矩『兵法家伝書』のなかに「すべての物事は、完全に体得すれば意識せずに自然におこなえるようになり、それが道の極意というものである。」とあります。
ここからも自然体は「技」であることが説かれています。
中心感覚をもった者同士が的確な距離感でやりとりすることによって、場は活性化するようです。
腰がぐっと決まって、新しく何かをやる気力が生まれるような対話がそこにあります。
そのときには、肩の力も抜けていて、呼吸はリズミカルで深くなり、落ち着いた持続力のある充実感が身体を満たすのです。
「俯に落ちる」という感覚を味わうこともあり、呼吸が深くなり、内臓がぐっと下に落ち着くような感覚は、自然体の感覚です。
是非、あなたも「技化」による自然体を創り味わってみてください。