丹田を鍛える方法と効果
 

 
現代は科学万能で物質文明が合理主義と相まって進化を極めるかのように思われていましたが、人間の精神面でどうにもならない問題に直面して、本来は健康で幸福であるべき多くの人がストレスやノイローゼなどの精神障害で苦しんでいるのです。

 

忙しすぎる今、日常的に疲れを感じやすくなっています。

 

そのことは、あなたの心身に疲れがたまって異変が内在しているということの証拠として、めまい、耳鳴り、頭痛、むくみやふらつきなどの症状が警告として発せられています。

 

こうした危機的な状況から、人間本来の主体性を取り戻し、あなたの秘められた潜在力を発揮して、心身の健康を盤石なものとして、あなたの人生を好転するための秘法が「丹田を鍛える」ことです。

 

丹田を鍛える

 

実は「丹田を鍛える」とは、武道の秘伝として連綿として伝えられてきた、人間の全人的能力の開発による必勝法なのです。

 

武道では「腹(ハラ)」と「肚(ハラ)」という2つの違った「ハラ」があります。

 

この違いは丹田が鍛えあげられると「腹(ハラ)」が「肚(ハラ)」となり達人の域への進化を顕わしています。

 

「肚(ハラ)」が意味するものは、「肚を括る(ククル)」という表現で「腹を切る」⇒「死の覚悟」という勝利のための武道的心法であり、「平常心」を以って全人的能力を発揮して強さを示してきたのです。

 

植物の根に当たる部分を人間に置き換えるならば、丹田がその根に当たります。

 

根が、大地から養分を吸い上げるはたらきをして、全体を生育させるように、丹田を鍛えることは、人間全体を生育させる根本なのです。

 

人間教育を知育・徳育・体育に分けて考えた場合、この三つの面を同時に育成する根源は丹田にあります。

 

丹田に重心を落として心を鎮めれば、大脳のはたらきは良くなり、精神は落ち着き、身体は活性化してきます。

 

そして、知育・徳育・体育は一元的に実現するのです。

 

丹田を鍛えるということは、人間を総合的に向上させるための最も根本的な方法であり、あらゆることに通じるきわめて汎用性の高い修行法ということになります。

 

丹田は心身の健康と人生好転の秘法

 

人間が老人になっていくことは、ただ衰える一方で、価値が減っていくだけでなく、それぞれの年齢ごとに意味があるからではないでしょうか。

 

人間には生きている限り進歩し向上していく何かがあるはずであり、そうでなければ、人生の意味や価値はなくなってしまいます。

 

あなたもご存知の宮本武蔵、白隠禅師、山岡鉄舟などは、高い精神的境地に達し、晩年になるほど高い次元の能力を発揮しています。

 

人間誰でも一定の年齢を越すと、体力、記憶力、敏捷性などが衰えていくのは確かではあります。

 

しかし一方で、生涯にわたり心身の健康を維持して人生を好転させ成長し続ける能力もあるのです。

 

そのカギを握っているのが『丹田』なのです。

 

人間という存在はきわめて繊細で微妙なものです。

 

より強くより早くといった即物的な価値観では測り得ない、人間には、知られざる潜在力が眠っているのです。

 

丹田は、知力、技術力を一段と高い次元で活かして、人間を全体的に向上させる力を持ったコントロールセンターなのです。

 

あなたの中に秘められたより高度の次元の能力を今から年齢とともに向上させて人生を生きがいのある素晴らしいものにしましょう。

 

丹田を鍛える効果

 

人間は頭脳や筋力の鍛練だけでは、能力のほんの一部が開発されるだけで、人間全体の能力を実現することはできません。

 

丹田を鍛えることによってはじめて、全人格の統一的発展が可能になるのです。

 

ギリギリの境に立って生死を決する武の道の達人などは、禅でいう「不立文字」「言詮不及」の世界として、言葉には出していないが、当然の前提として『丹田』を重要視していたことは明らかです。

 

ここで改めて、丹田を鍛える練丹がどれほど全人的発達に効果があるかを考えてみましょう。

 

丹田の練磨によって主体性が確立する

 

宮本武蔵の「神仏を尊んで神仏に頼らず」といった態度は、主体性が確立した典型です。

 

人間の直立姿勢を保持する中心は腰です。

 

そして、人間の主体的立場は、この腰をしっかり立てて重力を支えることで保たれるのです。

 

胸椎と違い、腰椎は周りの筋肉で支えられているだけなので腰は全方向に自由に動かすことができますが、強度的には問題があり、腰痛などを起こしやすいのです。

 

しかしながら、丹田の充実によって可動性と強度という、相容れない要求が同時に実現されるのです。

 

この物理的な自律は、精神的な自律につながっていき、丹田を練った腹の人は、他に頼らない自律自助の人となり、腹を決めたとき、独創力が湧き、柔軟な状況判断力が発揮できるようになるのです。

 

疲れにくい体になる

 

丹田を鍛える練丹と呼吸は密接な関係があり、丹田を練るための主役は呼吸にあるといえます。

 

しかし、一般に言われている「腹式呼吸」ではなく「丹田呼吸」といった特殊な呼吸法で鍛錬します。

 

方法は後で記しますが、「腹式呼吸」との違いは息を吐き出すときに「おなかをへこませる」か「へこませないか」というところです。

 

そして「丹田呼吸」を行うと、体の軸が安定し、無理のない姿勢を保てるようになるので自律神経の働きも整い、疲れにくい体にもなるんです。

 

この呼吸法は、横隔膜を十分にはたらかすことで可能になります。

 

したがって、横隔膜の働きによって、底部が下がると肺の体積は大きく拡大することになり、外見からはそれと察知されずに、深い呼吸ができるようになります。

 

このような、「声あらず、結せず粗ならず、出人綿綿として、存するがごとく亡きがごとく(天台小止観)」といった、微細にして滑らかな呼吸は、身心の健康の面からもきわめて大切なことであるといえます。

 

内臓を強化する

 

昔の武芸者は、超人的な体力、膂力にすぐれた人物が多かったといえます。

 

例えば、針谷夕雲は、竹刀でもって鉄兜をかぶった男をたたき殺したといわれていますが、こういう力はただの筋力だけでは不可能です。

 

丹田を鍛えることによってのみ養われる力ということです。

 

筋肉トレーニングだけではまったくもって不可能で、丹田力による内臓の強化を基盤とした体力や膂力の練磨なればこそ、本物の運動能力を育てるのです。

 

丹田充実の立役者である横隔膜という筋肉は、はたらいていないときはドーム状になっていて、緊縮すると下方に下がります。

 

そのために腹腔内の圧力があがるから、内臓にたまった静脈血は絞り出されるように心臓に還流されます。

 

腹部は広い空洞であるから、古い血がたまりやすいから、丹田の充実によって腹圧をかけるようにしないと、汚れた静脈血はいつまでも内臓に滞留することになってしまいます。

 

心臓が動脈血のポンプであるならば、充実した丹田は静脈血のポンプであるといえます。

 

これは、二木謙三博士の説で、横隔膜は腹腔にとって天井であり、胸腔にとっては底部になります。

 

したがって、横隔膜の降下は腹腔を陽圧にすると同時に、胸腔を陰圧にすることになります。

 

心臓や肺は陰圧の環境におかれるとよくはたらく性質を持っているから、丹田の充実という一つの事が、腹部と胸部、両方の内臓を強化する2つの作用を同時に果たすことによって、内臓が強化されるのです。

 

自律神経がコントロールされ妄想・雑念を去る

 

内臓には自律神経が密集して張りめぐらしてあって、内臓の活動をコントロールしています。

 

そういう関係から、内臓の強化は自律神経の強化につながることになります。

 

自律神経の強化・安定は、ホルモンのバランスも調えることになります。

 

自律神経系とホルモン系は、心理面に大きな影響を与えるのです。

 

自律神経が衰弱したり、ホルモン系がバランスを乱すと、心理面にも乱れを生じ、妄想や雑念に取りつかれることになってしまいます。

 

また、丹田を充実させるために、上腹部を柔らかく凹ませた状態にすることが必要だが、このことは自津神経の集合である太陽神経叢を活性化して、心理的安定に大きく寄与することになります。

 

ストレスに強くなる

 

日常生活の中で、あなたは絶えず、物理的にも心理的にもストレスにさらされているのです。

 

このストレスがあなたの身体や精神を蝕んでくるのです。

 

充実した丹田は、ストレスを吸収して、その侵略を防ぐはたらきをします。

 

例えば、何か大きな物音がして驚いたとしても、丹田が充実していれば横隔膜が上がって心臓を刺激しないので、動悸が起こらず落ち着いて対処ができるはずです。

 

だから、何か困難な事態に陥った場合でも、丹田が充実していればいたずらに悲嘆することなく、凛然たる勇気が湧き上がってきて、いたずらに悲嘆し、絶望感に打ちひしがれることがなくなります。

 

心が安定する

 

「水清ければ月宿る」で、波一つない澄み切った湖面は、月が出れば月そのままのすがたを正しくとらえます。

 

少しでも波立てば、たちまち月の本来のすがたはゆがんでしまうのです。

 

当然のことながら、情報を判断するときの心境も、静かに澄み切った湖面のようであることが望まれます。

 

しかしながら、心の安定は、知識やヤセ我慢的なガンパリではどうにもなるものではありません。

 

身体と心を一つにして身心を安定させることが必要になってきます。

 

そして、身心を統一して安定させるのは腹であり、丹田の強化で実現するものです。

 

たとえ有事にあっても泰然とし、無事にあっても万般に心配りできるのは腹の人であり、副交感神経主導型の人です。

 

「大賢は大愚の如し」というのは、腹の人であり、悠然と構えて必要に応じて頭の人にも胸の人にも転ずる可能性を秘めた人のことなのです。

 

大自然との一体感や生命の本質を体得する

 

江戸末期に輩出した剣豪の白井亨は、白隠禅師の内観練丹の法により名人となり、五官のはたらきに頼らず、丹田の力で外界の動きを察知して、丹田からの赫気によって相手を圧倒してしまったようです。

 

また、同時代の山岡鉄舟の晩年の剣は、ユッタリとしていながらスキのない神技となり、書は年とともに冴えているのです。

 

白隠禅師もその書は、年齢を重ねるほど気韻が満ちて、見る人を圧倒するものがあります。

 

人間にはこうした、近代合理主義的価値観では説明のつかない力をそなえているものであり、丹田の充実は、大自然との一体感や生命の本質を体で認識させ、自我を宇宙大に拡大させるのであります。

 

丹田を鍛える方法

 

今回は、多くの医学者、心理学者や生理学者からストレスをはじめとする精神障害に効果があると高い評価の丹田呼吸法と瞑想を利用した白隠禅師の内観法と軟酥の法を紹介します。

 

内観錬丹の法やり方

 

まず仰向けに寝て両足を伸ばし、身体中の気をへその回りから気海丹田、腰、脚、足の裏と満たします。

 

これが丹田呼吸法です。

 

息を吸うときも吐くときもおなかを凹ませずに、おなか周りを硬くしてパンパンに膨らませたまま息を吐き切っていくのです。

 

上半身はリラックスしたままで、腹圧を確かめるためにおなかに手をあてて、足の裏から吸い上げるような気持ちで息をゆっくりと吸っておなかを膨らませます。

 

吸いきったら、へその回りから気海丹田、腰、脚、足の裏に気を充実させて息をとめます。

 

それから、5~10秒かけて、おなかを膨らませたままおなかの圧を緩めないように、息を吐ききります。

 

この時のコツは肋骨が沈んでいくような感じとともに、反っている腰のアーチが床についているようになればOKです。

 

後は、これを繰り返します。

 

慣れないうちは7回ぐらいから始めましょう。

 

これを一日一回、できれば朝晩、各1回ずつやってみましょう。

 

次がメンタルトレーニングとして次の四つの言葉を何度も繰り返します。

 

我がこの気海丹田腰脚足心、総に是れ本来の面目、面目何の鼻孔かある。

 

我がこの気海丹田、総に是れ本分の家郷家郷何の消息かある。

 

我がこの気海丹田、総に是れ唯心の浄土浄土何の荘厳かある。

 

我がこの気海丹田、総に是れ己身の弥陀弥陀何の法をか説く。

 

しかし、これは白隠禅師の言葉を直訳しただけの言葉で何の事だかさっぱりわかりませんよね。

 

簡単に言うと、心身ともにリラックスして、心の中の雑念などをすべて放り出して無念無想になることなのです。

 

そこで、次の言葉を心の中で繰り返しましょう。

 

私は全てを放り出してしまっている。

 

一切の私の力はぬけ、体の中のすべてがくつろいでリラックスしている。

 

自然にすべてをまかせています。

 

私は全てを放り出してしまった。

 

私はくつろいでリラックスしている。

 

このように何度も繰り返しイメージを深めていくと、「一身の元気いつしか腰脚足心の間に充足して、臍下瓢然たること未だ篠打ちせざる毬の如くなる。」

 

つまり丹田が充実してひょうたんのようになり、まだ竹の棒で打つ前の蹴毬のように固くなるというのです。

 

軟酥の法は簡単にできるイメージ療法

 

イメージ療法で多くの人に知られているものとしてシュルツの自律訓練法があります。

 

これは「腕や脚が重くなるあるいは温かくなる」「心臓が静かに規則正しく打っている」「呼吸が楽だ」「みぞおちが温かい」「額が涼しい」といった六段階の公式を順番に自己催眠法で自分に言い聞かせて、ストレスをとり除く心身の健康法として多くの実績を上げています。

 

しかし白隠禅師は、これよりも二百年も昔に、軟酥の法というイメージ療法を創案していたのです。

 

しかも、シュルツの方法がリラックスさせることのみに偏して、姿勢や気合に考慮が払われていないきらいがあります。

 

したがって、心身の健康法や創造性開発法として応用するには、白隠の軟酥の法が、気合のこもった身心統一の実現に意が用いられている点で、すぐれていると言えます。

 

軟酥の法のやり方

 

清浄な色と香りのする鴨の卵のような軟酥を頭に載せる。

 

それが頭を潤し、両肩、両腕、胸、肺、肝臓胃腸、背骨、尾骨を気持ちよく浸しながら降下してくる。

 

全身の凝りや痛みを癒しながら流れ降りるのである。

 

両脚を温め潤し、足の土踏まずまで来て止まる。

 

このようなイメージを何度かくり返すのである。

 

これによって、内臓の気の滞りをなくし、胃腸のはたらきを活発にし、皮膚は張りが出て、どんな病気でも治すし、徳を積み道を成就することができる、と自隠は自信をもって述べているのです。